精油の起源は1000年前|アロマの歴史と天才医師イブン・シーナの功績

歴史の中の香り

様々な自然の植物からとられた精油を「植物からとられる宝石」と称した人がいました。

それは植物にとっては血液のようなもので、注意深く抽出して、注意深く保存しないと「死んでしまう」と言われています。

実は、この香りのしずくが手に入るようになったのは、1000年も前の発明が関わっているんです。


医学も哲学も極めた天才、イブン・シーナ

時は約1000年前のことです。場所は今のイランあたり。
そこにイブン・シーナ(アヴィセンナ)という、とても頭のいい人がいました。

彼は、10歳にして様々な文学書やコーランを暗唱し、16歳の時には医師として患者の診療をしていました。医学、哲学、天文学などを研究していた人で医学書「医学典礼」をあらわしました。その「医学典礼」は、その後500年以上もヨーロッパの大学で使われ続けました。

そんな天才が、植物の香りの力にも注目していたんです。


精油の抽出法を生み出したのはイブン・シーナ!

古代エジプトやローマの時代、人々はオイルに植物を漬けてアロマオイルを作ったり、香りの煙を焚いてアロマセラピーをしていました。
そのような方法だったので、純粋な香りの成分を取り出すことは難しかったんです。

そこでイブン・シーナが考えたのが、水蒸気蒸留法です。
植物に蒸気を通し、その香りを含んだ蒸気を冷やして水と香り成分に分ける方法です。

実はこの蒸留法は、紀元前3世紀ごろから使われていました。船乗りが飲み水を得るために海水を蒸留したり、香料を抽出するためにも使われていたようです。その方法を現在のような形にしたのがイブン・シーナなのです。

そして、記録に残っているのが、バラの花から香りを始めて抽出したという話です。

この最初にとられたバラの精油は「ローズアッター」だったともいわれています。ローズアッターというのは、サンダルウッドの香りが入った容器にローズを水蒸気蒸留していくインド独特の香りの製法です。

  


どうしてバラだったの?

バラは昔から「花の女王」と呼ばれ、優雅で甘い香りは心と体に良い働きがあると考えられてきました。
ペルシャやエジプト、インド、ギリシャ、ローマなど、古代のさまざまな文明でも、バラは薬や香料として、とても大切にされていたんです

中世の薬草書「マテリアメディカ」には、バラから作られた治療薬のレシピなどがたくさん出ています。

そして、この蒸留のときにできる香りのついた水が、ローズウォーターです。

今でもそうですが、イブン・シーナの時代にも、ローズウォーターはお肌のケアとして、そして香りづけにも使われていました。

この時代の中東では、ローズウォーター、ローズ精油、ローズジャム、ローズのはちみつ漬けなどの原料として、バラはとても貴重な農産物でした。

  

今も変わらない水蒸気蒸留法

実は、この水蒸気蒸留法、1000年たった今も、ほとんど同じ原理で使われています。
もちろん器具は進化していますが、植物の香りを大切に引き出す方法は変わらないんです。

大がかりな機械は必要ないので、小さな農家さんがこの方法で今も精油を作っています。

また、アロマのスクールやハーブ園などで、蒸留釜を使ってこの方法で精油を抽出しているイベントがあったりします。

1000年も前のイブン・シーナの発明が、アロマセラピーや香水文化の礎になり、今も変わらずに私たちの暮らしを彩ってくれているんですね。

精油瓶を手にしながらそんな歴史に思いを馳せてみました。

 

  

  

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