
先日、ある方とお話ししたあとに、「今日はすごく楽しかった。ありがとう」というメッセージをもらいました。
決して楽しい内容ではなかったので、その言葉が、少し心に残りました。
「楽しかった」という言葉の理由
障害のある息子さんがいる方です。夫は退職して家にいますが、彼女は様々な責任を一手に引き受けて、いつも忙しく過ごしておられます。
日ごろ、なかなか話せないつらい気持ちや愚痴を聞いたあとに、こんなメッセージが届きました。
普通に考える「楽しい」というひとときではなかったのに、そんな表現をしていたことにちょっと驚きを感じました。
彼女にとっては、話せたこと自体が嬉しかったのでしょう。周りの友達には話せない内容だったようです。そんな話を、否定も評価もされずに受け止めてもらえたことで、安心されたのだと思います。
人は、自分の気持ちをそのまま言葉にできると、心が軽くなります。

なぜ気持ちを表現するとホッとする?
「こんなことを言ったら、どう思われるだろう」
そんな思いから、自分の気持ちを話せなくなることがあります。
どうせ分かってもらえない、と感じている人もいるでしょう。中には、感情を出してはいけない、という環境で過ごしてきた人もいます。
でも、抑え込んだその感情は身体に残ります。
肩こり・疲労感・ため息にあらわれます。
心の中にたまっていたモヤモヤした感情を言葉にすると、話した瞬間、体の緊張がゆるみ「安心感」を覚えます。抑え込んでいた感情を表現して心が軽くなることを「浄化」や「排泄」を意味する「カタルシス」という言葉で呼びます。
映画などを見て涙を流すことも、感情の開放となり、精神的な緊張感がほぐれていきます。
自分の中の思いに気づく
そして、心の中にある感情を話すことで、自分でも気づいていなかった思いに出会うことがあります。「私は、本当はこんなふうに感じていたんだ」
「こんなふうにしてほしかったんだ」
言葉にすることで、心の奥にあった思いがはっきりし、混乱していた気持ちも少しずつ整理されていきます。こうした過程を「オートクライン効果」とも呼ばれます。
そして、自分の言葉がそのまま受け入れられた時に、自己否定もとまります。
「こんなことは言っちゃダメ」「こんなことを思ってしまう私がいけない」
そんなふうに無意識に、自分の思いにフタをしてしまっていることもあります。
そんなことはない、あなたはそう感じてもいい。
話を聞いてもらえたとき、そう認めてもらえたように感じるのです。
何かが解決したわけではなくても、気持ちをそのまま言葉にできたとき、人の心は少し軽くなります。
誰に話す?
ただ、誰にでも話せばいいわけではありません。気持ちを安心して話せる相手には、いくつかの条件があります。
・話を途中で否定したり、正そうとしない人
・その場で聞いたことを、外に広げない人
・愚痴や不満をあおるのではなく、静かに受け止めてくれる人
こうした相手だからこそ、自分の気持ちを言葉にすることができるものです。
安心して言葉にできる場所がないように感じる人のために、もう一つのカタルシスの方法を、次回ご紹介したいと思います。


